Gravity Keycaps Chocの販売再開について、大変お待たせしてしまい申し訳ないです。
気づいたら一年以上販売していない気が。。
再入荷メール登録してくれている方、すいません。
追加されるたびに応援されてる気になり後押しとなっています。
現在の試作がうまくいけば安定供給できるのではないかと思っています。
(今度こそは。。)
もうしばらくだけお待ちいただければと思います。
書いてみたら長くなったので、以下は詳細に興味がある方だけお読みください。
今一度、状況を整理してみたいと思います。
なぜが製造止まっているか?
歩留まり(良品の割合)が悪いためです。(Chocの足が折れる、痩せるなど)
ある程度の量を注文して、一つ一つ検品して良品だけを集めていましたが、時間的にも肉体的にも結構つらい。
それに加えて、製造費の高騰があり、歩留まり改善をしないとそもそも成り立たない状況に。改善がうまいこと進まないまま時が経ってしまいました。
要件
改めて、一般的にキーキャップに求められる要件を考えてみます。
A. 安定して打鍵ができる(グラつきが少ない、すっぽ抜けない)
B. 交換が可能である(ある程度抜き差ししても足が折れない)
C. 指が触る面が滑らかである
このあたりでしょうか。
製造方法
市販のキーキャップはほとんど射出成形で作られていると思うので、この辺りはクリアしやすいのではないかと思います。(それなりの苦労はあると思いますが、ノウハウもあると思われる)
しかし、Gravity Keycapsはその特性・ターゲット・現在の状況から、射出成形に投資するのは適切でないと判断しています。後ほど少し補足します。射出成形が選択できないとなると、やはり3Dプリントでの製造が現実的と思われます。
3Dプリントの製造方法と問題点
そもそもこのキーキャップは必要に迫られて作りましたが、(その辺の詳しい話はこちら)
一方で、作れるかもしれない、作りたいなと思ったのは先人達がDMM.makeというサービスの「MJF PA12GBのブラック磨き」を使っていたからというが大きいです。お店でも取り扱わせてもらっている、 "3D" キーキャップ Claw44セット designed by zk_phiは個人的にも愛用していて、形状の素晴らしさ、滑らかさ、見た目、強度どれも気に入っています。
他にも色々なサービス、素材で作ったことはあるのですが、自分でキーキャップを作るならこれがベストかなと思っています。この製造方法に惚れ込んでしまったのですね。
しかし、問題がないわけではありません。
Gravity KeycapsはChocスイッチをベースに設計されているのですが、これに対応するキーキャップは細い足が二つ生えている設計になっており、これが問題を引き起こします。(逆にMX用はこれらの問題の影響をさほど受けないので、すでに安定製造されています)
問題は二つあり、
1. 研磨
MJFというのは簡単に言うと、粉末を焼結して固めることによって造形をしています。そのため、表面仕上がりは粉っぽくザラザラしています。表面を滑らかにするために研磨をかけるのですが、足が脆いので研磨時に折れる、または削られすぎてキースイッチに固定されないといったことが起きます。
2. 精度
MJFという方式は光造形による3Dプリントほどの精度が出るわけではなく、各発注や個体によって足の太さにはバラツキが出ます。太ければスイッチにハマらず、細ければスカスカでキースイッチに固定されません。
これらをそれぞれ解決しなければなりません。
問題点の打開策
初めは「1. 研磨」の問題の方が大きいと考えていました。
そのため、単純に足をガードするようなパーツを付加して、後で切り取れば良いかなと考えていました。
しかし、思ったよりもうまくいかず。。
Gravity Keycaps 販売再開に向けて改良中! – Daily Craft Keyboard
Gravity Keycaps の進捗報告 – Daily Craft Keyboard
この辺で心が折れたのと、本業で重い案件があったのでしばらく動けず。
その後、磨きをしないバージョンを作っていたのですが、結局問題は「1. 研磨」だけでなく、「2. 精度」の問題も大きいのだなと痛感。
一旦、3Dプリントを離れて射出成形のトライへと進みます。
射出成形へのトライ
3Dプリントに心が折れている時に、卓上射出成形機「TAIYAKI」を作られているHAL900さんに声をかけていただき、TAIYAKIでキーキャップを作ってもらいました。
Gravity Keycapsを卓上射出成形機「TAIYAKI」で作っていただきました – Daily Craft Keyboard
光造形3Dプリントによる型ながら、十分な精度だったのでさすがだなと思っていました。しかし、本格的に作るにはアルミなどで型を作る必要があり二の足を踏んでしまいました。
そんな中、とあるきっかけである業者さんと相談させていただくことができました。
自分でも射出成形について勉強し、射出成形用のモデルに設計しなおし、見ていただくことでとても勉強をさせてもらいました。
発注までいけなかったことがとても申し訳ないですが、とてもお世話になりました。
いつか、ちゃんと発注できる状態のプロダクトを作りたいです。
Gravity Keycapsは特性上、どれだけ抑えても9個の型が必要(本当は13個は欲しい)で、それだけ費用がガンガンと乗ってきてしまう。さらに、射出成形としては少数と見なされる製造数では、製造費もそこそこ掛かってしまうことがわかりました。
同じ頃に天キーが開催され、ゆかりさんやYowkeesさんの射出成形の話を聞き、とても刺激を受けました。最終的に現時点での射出成形をやめたの一番の要因は、自分の売れる体制のなさでした。物を売るためには、良いものを作るのはもちろん、たくさんの人に魅力を伝えなければならないのだけど、それができるだけのスキルも余力も体制もないのだよな、と。一人でやっていることの限界について考えさせられます(良い面も悪い面もあり)
一方、この体験を得てモデルを変更したい箇所ができたこと、改めてプロダクトを考えると元々多品種製造をしたかった事も認識し、一旦方向性を改めました。
再度3Dプリントへ
そして3Dプリントに戻ってきました。
問題は相変わらず存在したままですが、射出成形の経験により一つは解消できるかもしれないという希望と共に。
射出成形の製造の条件に肉厚を一定にするというものがあります。厚さが一定でないとヒケ(凹み)などができて製造品質が下がるためです。
これを解消するためにGravity Keycapsもモデルの変更を行いました。
なんとなく、足細いし、強度が下がるのではと思って思い切ったことができなかったのですが、先ほどの業者さんのアドバイスをもとに変更を行ったのですが、あまり問題なさそうでした。
これは薄々わかっていたけど、ちゃんと向き合っていなかった問題を解決することに繋がります。バレル研磨を行うと、質量の大きいものはそれだけ力がかかり、足が折れやすくなるという仮説です。このモデリングにより軽量化され、「1. 研磨」の影響による歩留まりが良くなるのではと期待しています。
このキーキャップはロープロのChocにつけるわりには背が高いものがあり、そのまま中を埋めると質量が大きくなってしまう。他のChocキーキャップではあまり聞かない問題が発生するのはそのためだと思います。
そして、もう一つの問題「2. 精度」についてです。
初期のモデルは試しで、ほぼChocの仕様通りの直方体を作っていました。
自分用に作るのであれば、これくらいでもさほど問題はないと思います。
しかし、ある程度の数を作ると、バラツキが寄りすぎた時に廃棄数がとんでもないことになります。
精度のバラツキがあってもうまく機能するようなモデリングが必要で、何パターンか試していたのですが、どれもうまくいかず。
ようやく大丈夫かなと思える形状にたどり着いたので、これで数を作ってみて検証してみたいと思います。
試作品
というわけでこれらの試みがうまくいけば、より安定した製造がようやく再開できると思います。
ガードつけた時も初回は良さそげだったので、まだ油断はできないのですが。。
※完売しました。ありがとうございます!
試作品が少しだけあるので、販売しようと思います。
興味があったら購入の御検討をお願いします。
長くなりましたが、販売再開までもう少し待っていただけると助かります。
あ、あとこれがうまくいったらLow版の復活と、個別キーキャップについての販売も予定しています。
よろしくお願いいたします。